ウェアラブルデバイスデータから乳がん患者の「痛み」や「倦怠感」を予測するAIモデルについて発表します

当社は、2025年10月16日〜18日にかけてパシフィコ横浜で開催される第63回日本癌治療学会学術集会にて、ウェアラブルデバイスから得られる生体情報と、乳がん治療中の患者さんが申告する症状との関連性に関する研究成果の口頭発表を行います。本研究は、株式会社リサ・サーナ様、国立がん研究センター東病院・先端医療開発センター 全田 貞幹先生らの研究グループとの共同成果となります。

今回の研究は、株式会社リササーナ様が運営する、女性特有がんに直面する方のための無料会員制SNS「Peer Ring」会員様にご協力いただいて実施した、デジタルデバイスを活用した日常生活を検証する共同研究プロジェクト「サバ子ちゃんヘルスアップチャレンジ」で得られたデータに関する解析結果の一部となります。

研究の背景と課題

がんの治療を受ける患者さんは、痛み、倦怠感、吐き気など、治療に伴う様々な症状に悩まされることが少なくありません 。これらの症状は、患者さん自身の自己申告によって把握されていますが、記憶の曖昧さや表現の個人差といった課題があり、日々の細かな変化を客観的かつ継続的に捉えることは困難です。

そこで我々は、日常生活における生体情報を手軽に取得できるウェアラブルデバイスを利用した、症状の客観的モニタリングの可能性について研究を行いました。

図1. 本研究の概要。合計100名の被験者から6ヶ月間、毎日30項目の生体データを取得した。

本研究の内容・成果

本研究では、乳がん治療を受けたことのある患者さん100名を対象に、約半年間の間、市販の腕時計型活動量計・Fitbit*1を装着いただき、日々の活動量、睡眠、心拍数などを計測しました。あわせて、FIitbitの装着期間中は、痛みや倦怠感など11項目の自覚症状の強さについて毎日記録していただきました 。

これらの大規模な計測データを解析し、過去7日間の生体情報から翌日の症状の強さを予測するAIモデルを構築したところ、特に「痛み」「倦怠感」「眠気」において、高い予測精度が確認されました 。

さらに、症状が強い日とそうでない日で生体情報にどのような違いがあるかを比較した結果、以下の関連が明らかになりました 。

  • 活動量との関連:痛みや倦怠感が強い日は、軽い活動時間や歩数が有意に減少していました 。

  • 睡眠との関連:症状が強い日は睡眠が不規則になる(日々の総睡眠時間のばらつきが大きくなる)傾向が見られました 。

  • 心拍数との関連:症状が強い日は、安静時心拍数が有意に高い状態にありました 。

これらの結果は、ウェアラブルデバイスから得られる客観的なデータが、患者さんの自覚症状と密接に関連していることを示唆しています。

図2. 活動量と症状スコアの関係:日々の歩数や軽い運動時間が多いほど、痛みや疲労感が軽い傾向が見られる。

今後の展望

本研究成果は、ウェアラブルデバイスががん患者さんの日々の体調変化をリアルタイムかつ客観的に捉えるための有効なツールとなり得ることを示しました 。将来的には、症状の悪化の兆候を早期に検知し、医療従事者による適切な介入を促すことで、患者さんのQOLの維持・向上やリハビリテーションを支援するシステムの開発を目指します 。

補足

  1. Fitbit、及びFitbitのロゴは、フィットビット・インクの米国及びその他の国々における商標、サービスマーク、かつ、または、登録商標です。その他のFitbitの商標は https://www.fitbit.com/legal/trademark-list をご参照ください。本リリースで言及されている他のすべての商標、サービスマーク、製品名称は、その各々の所有者の所有物です。

発表情報

学会名

第63回日本癌治療学会学術集会

発表日時

2025年10月16日(木) 10:30~11:30

会場

パシフィコ横浜 会議センター 4階 第13会場(〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1丁目1−1)

発表者

前川 峻、瀬々 潤、佐藤 牧人、澤谷 真葵、上田 暢子、淀川 知子、佃 美紗都、全田 貞幹

演題名

演題番号: O26-1「乳がん治療中患者におけるウェアラブル活動指標と自己申告症状の関連」

セッション名

一般口演26 「がんリハビリテーションのトレンド」

本発表に関するお問い合わせ先

本発表に関するお問い合わせは、下記のリンク先(お問い合わせ専用ページ)よりお願いいたします。

関連プレスリリース