ユーザーインタビュー|藤原 真一様

このページでは、Humanome CatData(以下「CatData」)を実際にお使いいただいているユーザーの皆様へのインタビューをご紹介します。使ってみてどのように感じたか? など、率直な意見やご感想についてお伺いしています。
ご利用をお考えのお客様の参考になりますと幸いです。

お話しいただいた方

藤原 真一様

1978年 東京大学法学部を卒業後、新日本製鐵(現:日本製鉄)へ入社。1987年 John F. Kennedy School of Government, Harvard University, Master of Public Policy 修了。2013年より新日本製鐵常務執行役員、2015年より新日鐵住金エンジニアリング代表取締役社長、2020年より日鉄エンジニアリング相談役。2022年に相談役を退任後、DX(特にデータサイエンスベースの意思決定強化・推進を希望する事業体)支援を目的とする「DSマインド」を開業。

「DSマインド」設立趣意書

インタビュー

時代によって変わりゆく「評価されるスキル」

ヒューマノーム研究所(以下「HNL」):
本日はインタビューのお時間を頂戴し、ありがとうございます!

今日は、これまでの藤原さんとデータ解析のかかわりや、CatDataを使われたご感想、今後さらに本格化していくAI・DX時代に向けたお考えなどを、ざっくばらんにお聞かせいただけたらと思います。

藤原さんは元々プログラミングをしていたんですか?

藤原真一様(以下「藤原」):
学生のころに、FORTRANをちょっとだけさわったことがあります。法学部だったので、教養科目として習いました。会社に入ってからは、COBOL系の言語にも触れました。

社会人に必要とされるスキルってどんどん変わってますよね。

数字を扱う業務でいえば、昔は紙に書いてある数字をそろばんや電卓で計算して、検算して・・・という世界で、暗算や電卓早打ちの特技を持っている人が羨ましかったですが、パソコンの登場により、世界が一変しました。これまでになかった表計算ソフトなどの新しいテクノロジーの登場により、これを使いこなすスキルの時代に突入したのだな、と感じました。

それから40年ほどが経ち、これからはAIを使いこなす力が問われていくのだろうと考えています。

HNL:
藤原さんは、データサイエンス技術がこれからのビジネスに大きく影響する、という先進的な目線をお持ちで、積極的に新しい技術を取り入れていらっしゃる印象があります。以前、藤原さんが(日鉄エンジニアリング株式会社で)社長をされている時に、社内にデータサイエンスの部門を作られてましたよね?

藤原:
ヘッドは外部から招き、内部人材5人くらいでデータサイエンス室をスタートさせました。最初の仕事は「社内で何かお悩みありますか?」の御用聞きです。結果、想像よりもはるかに多くの取組テーマが上がってきました。

例えば、何箇所ものゴミ溶融発電プラント設備の稼働データが、何年分もサーバに残っていることが判明しました。現場の人には「訳のわからないデータ」だったのですが、データサイエンティストから見るとまさに「宝の山」だった、といったケースです。

御用聞きメンバーがそのデータをチェックしたところ、類似設備ではパラメータが同じような挙動を示した場合には似たようなトラブルが発生していることがわかりました。これによって、このパラメータのある変動パターンが故障の予兆ではないか?というところまで見えてきました。

これまで活用されていなかったデータから得られる情報がたくさんある!という確信を得た私達は、複数箇所のプラントの操業や設備データを1箇所で見られる集中監視センター、いわゆるIoTプラットフォームを構築し、複数プラントの操業管理、設備管理等を飛躍的に効率化することができ、加えて予知・予防保全にも取り組めるようになりました。しかも、このシステムは、データサイエンスチームが一体となって基本オープンソースで構築しています。

当時、世の中にはIoTプラットフォームを売りにしている企業はありましたが、それを活用すると年間数千万円のコストがかかります。ちょっとした知恵でここまでできるのであれば、みんなでデータサイエンスを勉強して、こういったオープンソースのプログラム言語を勉強することで、課題に日々触れている現場の社員自らが課題解決に取り組めるし、大幅なコストダウンにもつながる、と確信しました。

そこで、社内にデータサイエンススキルをもつ現場人材を育成する学習コースを開設しました。Excelレベルのデータ分析ができるような人材を増やすためのジェネラルコースと、Pythonを用いてデータ解析ができる人材の育成に向けたアドバンスドコースを設置しました。アドバンスドコースは最後に演習があり、自分達で分析したいデータを持ちよって実際に解析を行う、というものです。

参加者を見ていて興味深かったのが、Pythonを使えるようになると、並行してそのスキルを使って新たにできることに気づいていく点でした。多変量解析系の機械学習を学んだエンジニアが、「今度は作業現場で撮影している画像から不安全行動などの画像認識AIモデルを作ってみたい!」というように、新たなアイデアを出してきたりするんですね。そういった学習と実務のサイクルが回り始めると、自律的に現場にデータを活かす環境が定着していくように感じています。

また、データサイエンスやAIは、勉強すればするほど日進月歩の技術である、と思わずにはいられません。

HNL:
この日進月歩の状態がどこまで続くのかは正直わかりません。ひととおりの主要な技術は出そろったような気はしますが、まだまだ現場で使えるAI、というところまでは落とし込まれていないように思います。誰にでも使いやすいAIを提供できる環境づくりに、引き続き取り組んでいくことが大切だと考えています。

藤原:
それはとても心強いですね。実際、僕自身はAIを現場業務に適用したことはないんですが、実装件数が増えれば増えるほど、おそらく色々な課題が出てくるのではないか、と思っています。

HNL:
今のAIを活かせているのは、例えばウェブ系の業者さんとか、データが取れているところだけ、という状況で、そこから一歩外れるとほぼ使えないという感じにみえています。「みんなが使えるようになる状態が実現する世界」ができあがるまでには、おそらく今までと全然違う勝負があるんだろう、と考えています。

藤原:
私は、前職を昨年6月末で退職したあと、8月から個人事業主として、DXやデジタル化を進めたいと思っているものの、どうやって進めたらいいのか?についてお悩みになっている会社様のお手伝いをしています。

例えば、ベテランの職人さんが持つ「経験値と勘」を今後にどう伝えていくかといった重要な課題があります。私は、この職人さんの価値をリスペクトしており、この「経験値と勘」を科学的に検証し、次世代がそれを活かすための橋渡しをする技術がデータサイエンスだと考えています。将来、ベテランの職人さんがいなくなっても、その会社が事業を継続していくために、社内に「経験値と勘」の根拠をデジタル技術で残しておくような取り組みをしたいと思っています。

しかし、全てを最初からシステム化するのは困難です。まずは、手で取ったデータを確認するところからスタートするような形でも良いと思います。

HNL:
データをとるのも大変ですもんね。

藤原:
取得できたデータは、いきなりAIモデル化するのではなく、その一歩手前の段階で、中身をしっかり見ること。いわゆる「見える化」を行うところから始まると思います。

HNL:
おっしゃる通り、僕らも「データをみる」ということはすごく重要だと思っています。いきなり解析にかける前に、一度データを見ることでわかることがたくさんあります。

藤原:
データを集めて、可視化することで、例えばベテランの「品質」に関する合否判断基準を検討したいのであれば、不合格と合格の判断に関連しそうなデータを確認し、それを可視化していくことで、関係者がそれを見ながら多角的な議論が始まります。その次にデータ分析ツールを活用しながら「何がその判断基準に寄与しているか?」というあたりへ深堀りしていく、といった段取りなのかな?と感じています。

HNL:
中小企業の現状を実際に見られていて、AI人材のリソースに関してはどう感じますか?

藤原:
結構きついんですよ。足りてないと感じることが多いですね。ただ、今、GAFAなどを辞めている人たちは高給な方が多いので、中堅・中小企業ではとても雇える金額ではありません。データサイエンスへの入り口をコスト面からも下げる工夫があるとありがたいと思います。

データ解析の入り口としてのノーコードツール

HNL:
藤原さんがCatDataをお使いいただいたきっかけをお聞かせいただけますか?

藤原:
2020年に社長退任後、会社のデータサイエンスのアドバンストコースでPythonを勉強したほか、いろいろなオンライン講座やWeb上のソースコードをみながら自習しました。結果的には画像解析やニューラルネットワークあたりまでは、プログラムを書いて実行するレベルになりました。

その後、あるプロジェクトの実務で使う機械学習モデル構築にもトライしました。悪戦苦闘しながら会社の若手メンバーにアドバイスをもらいつつ、PyTorchでモデルをつくるところまではできました。ニューラルネットワークを使って、精度85%くらいまでは到達したのかな。

さらに精度をあげるには、学習時のパラメータを調整しなければいけないんだろうな、ということはなんとなく分かっていましたが、まあとりあえずはこの辺でいいかなと妥協して、いったんここまでの精度で諦めていました。

その後、しばらくして巡り会ったのがCatDataです。

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