肺がん手術の精度向上に寄与する胸膜浸潤予測モデルの改良版に関する共著論文が発表されました
当社代表取締役社長の瀬々 潤、エンジニアのCalvin Daveyが携わった共著論文「Pleural Invasion of Peripheral cT1 Lung Cancer by Deep-Learning Analysis of Thoracoscopic Images: a retrospective pilot study」が、2025年4月30日公開の国際学術雑誌「Journal of Thoracic Disease」に掲載されました。本研究は、公益財団法人がん研究会 がん研有明病院・呼吸器センター外科(現・杏林大学)橋本浩平先生らの研究グループとの共同成果となります。
研究の背景と目的
これまで、本研究プロジェクトでは、手術中の胸腔鏡映像を解析し、病理学的胸膜浸潤の有無を予測する深層学習モデルの開発を進めてまいりました。その結果、このモデルは術者が術中に判断した浸潤評価と統計的に同程度の予測可能性を示しました。今回の研究では、前回のモデルをさらに改良し、予測精度の向上と実用化に向けた検証を行いました。
研究の概要
本研究では、前回の80名の患者データに加え、新たに収集したデータを用いてモデルの再訓練を実施しました。また、手術映像の撮影条件(距離、角度、照明など)の最適化を図り、モデルの汎用性と精度を高める工夫を行いました。さらに、手術映像からの情報抽出方法を改善し、AIモデルの学習データの質を向上させることで、より正確な胸膜浸潤の判定を可能にしました。
その結果、改良版モデルの患者レベルでの予測精度はこれまでに示されたものよりも向上し、外科医の評価精度と同等となることが確認されました。これは、術者による手術中の判断を、より確実にAIがサポートする可能性を高めたことを示唆しています。
今後の展望
私達は、さらなるデータ収集とモデルの改良を進めることで、実臨床でのリアルタイム手術支援システムの構築を目指しています。将来的には、支援システムにAIを統合することでリアルタイムに胸膜浸潤の予測を行い、術中の意思決定を支援できる環境づくりを目指します。このシステムの実現により、肺がん手術の精度向上と患者のQOL改善への寄与が期待されます。実現に向けて、さらなるデータ収集、多施設共同研究によるモデルの汎化性能向上など、多角的な取り組みが必要となります。
発表論文
Kohei Hashimoto, Calvin Davey, Kenshiro Omura, Satoru Tamagawa, Takafumi Urabe, Junji Ichinose, Yosuke Matsuura, Masayuki Nakao, Sakae Okumura, Hironori Ninomiya, Jun Sese, Mingyon Mun; Pleural Invasion of Peripheral cT1 Lung Cancer by Deep-Learning Analysis of Thoracoscopic Images: a retrospective pilot study, Journal of Thoracic Disease 2025, Vol 17, No 4 (April 30, 2025) ; doi: 10.21037/jtd-24-1510
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