新しいマルチオミクスデータを利用したがん患者生存率の予測手法に関する共著論文を発表しました

代表取締役社長・瀬々 潤が共著の論文「Predicting Deep Learning Based Multi-Omics Parallel Integration Survival Subtypes in Lung Cancer Using Reverse Phase Protein Array Data」が、2020年10月19日公開の国際学術雑誌「Biomolecules」オンライン版に掲載されました。本研究は、理化学研究所・高橋慧 特別研究員、国立がん研究センター・浜本隆二 がん分子修飾制御学分野 分野長らの研究グループとの共同研究成果となります。

肺がんによる死亡率は、世界のがん死亡者数の大部分を占め、死亡率も増加の一途をたどっています。そのため、がん患者の予後を正確に予測するツールは今後不可欠となると予想されます。近年は有用な予後の予測手段のひとつとして、マルチオミクス解析が浮上してきていますが、マルチオミクス解析に関連する方法論はまだ十分に確立されておらず、臨床へ応用するにはまだまだ改良の必要があると考えられています。

今回の研究では、マルチオミクスデータを用いて肺がん患者の生存率を正確に予測する新規手法の開発を行いました。
はじめに、教師なし学習技術を適用した機械学習モデルを用いて、The Cancer Genome Atlas(アメリカの大型がんゲノムプロジェクト)から提供されている6種類のマルチオミクスデータセットの中から、非小細胞肺癌の生存に関与するサブタイプ(遺伝子の特徴によってがんを分類したもの)を突き止めました。この「統合生存サブタイプ」と呼ばれる新しいサブタイプは、生存期間の長い患者グループと短い患者グループに明確に分けることが可能であり、かつ、得られた結果は病理組織学的分類に依存しないことがわかりました。

次に、単一種類のデータセットのみを用いて統合生存サブタイプを見つけ出す実験も行いました。逆相タンパク質アレイ(RPPA)のみを用いて訓練した前述の機械学習モデルは、統合生存サブタイプの正確な予測に成功し、さらに、予測されたサブタイプを用いて高リスク患者と低リスク患者の分割を実施したところ、良好な結果が得られました。

この手法は、肺がん患者の予後予測を目的とするマルチオミクス解析技術の発展に寄与するものと期待されます。

発表論文

Satoshi Takahashi, Ken Asada, Ken Takasawa, Ryo Shimoyama, Akira Sakai, Amina Bolatkan, Norio Shinkai, Kazuma Kobayashi, Masaaki Komatsu, Syuzo Kaneko, Jun Sese, Ryuji Hamamoto; Predicting Deep Learning Based Multi-Omics Parallel Integration Survival Subtypes in Lung Cancer Using Reverse Phase Protein Array Data, Biomolecules 2020, 10(10), 1460; doi:10.3390/biom10101460

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